塩は人にとって重要なミネラルが摂れる、身近な調味料です。
塩には、海塩や岩塩などさまざまな種類がありますが、古くから日本で作られ食べられてきた塩が「藻塩(もしお)」です。海藻由来のうま味が凝縮されていることが特徴で、塩辛さが尖らず、まろやかな美味しい塩として人気があります。
この記事では、藻塩について解説します。藻塩とは何か、その特徴や藻塩の種類、普通の塩と異なる点、そしておすすめの美味しい料理アイディアについても紹介しますので、ぜひ試してみてください。
藻塩とは? 海藻由来の天然塩の特徴
藻塩は、海藻と海水を原料として作られる天然塩の一種で、海藻エキスが豊富に含まれています。そのため、うま味が凝縮されたまろやかな口当たりが最大の特徴です。
藻塩の主な原料はホンダワラ(玉藻)と呼ばれる海藻ですが、近年では他の海藻を使った藻塩も登場しています。
ちなみに、藻塩が含まれる「天然塩」とは、加工が少なく自然なミネラルバランスを保ち、多彩な味わいが楽しめる塩のこと。料理をさらに美味しくさせてくれますが、製造に手間がかかるため価格が高めです。
天然塩について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
藻塩は日本独自の塩
塩は、人間の生命維持に欠かせない貴重なミネラルの塊であるため、世界中で塩作りが行われています。しかし、海藻を塩に利用した「藻塩」は、日本でしか生産されていません。
これは、日本人が持つ特有の体質が関係しているそうです。近年のアクサノリに関する研究によって、日本人の腸には海藻に含まれる食物繊維を分解できる特殊な腸内細菌がいることが明らかになりました。太古より藻塩を食べてきたため、そのように進化したのだろうと考えられています。
日本における塩製造の歴史では、縄文時代の藻塩焼きが最初と言われています。
最初の塩の作り方には諸説ありますが、海藻を使った目的は海藻エキスの利用ではなく、より濃い塩水を作るための道具であったとされています。最初の材料はホンダワラ(玉藻)で、海辺の遺跡からは藻塩焼きに使われた土器も発見されました。
参考:塩百貨「日本の塩づくりの歴史」
原材料によって藻塩のうまみと風味が異なる
藻塩は多くの場合ホンダワラで作られますが、日本全国でさまざまな海藻を使って塩作りがされるようになっています。代表的な4つの海藻で作った藻塩の特徴を紹介します。
【ホンダワラ】
かつては玉藻と呼ばれていた海藻です。ホンダワラで作った塩は柔らかく、苦みはありません。海藻らしいうま味が楽しめます。
【カジメ】
カジメはコンブ科の海藻で、海の中では濃い緑色をしていますが、乾燥させると真っ黒な色になるという特徴があります。塩も黒っぽい色をしていますが、あまり味は強くなく、血圧や血糖、体重を抑制する作用を持つアルギン酸が豊富に含まれています。
【コンブ】
コンブで作った塩は、だしに濃厚なうま味があり、甘みも強く出ます。魚料理の付け塩や、焼き魚などで使うことがおすすめです。
【クロメ】
クロメもコンブ科の海藻で、西日本では味噌汁や佃煮として食べられています。塩にすると、海藻らしい海の香りが感じられ、特に魚介類の調味料として使われます。
藻塩と普通のお塩との違い
一般的なスーパーで取り扱われている食塩は海水を精製したもので、天然塩に対して「精製塩」と呼ばれています。製造過程で余分なミネラルを除去し、塩化ナトリウムが99%以上含まれる純度の高い塩となっています。
そのため、海藻と海水を使って作る天然塩の一種である藻塩とは、以下3つの点で異なります。
- 含まれるミネラルの種類
- 色
- 味
藻塩にはナトリウム以外にもミネラル、たとえばカルシウムやマグネシウム、カリウム、ヨウ素などが豊富に含まれています。
また、海藻のエキスも含まれるため、色が精製塩のように真っ白ではありません。海藻によって異なりますが、ベージュや淡いピンク、黒っぽい塩ができます。
そして、さまざまなミネラルが含まれることから、味もより複雑になり甘さやうま味、コクなどが感じられます。
普通のお塩より塩化ナトリウム量が少ないため、同じ量を使用しても塩分を控えめにできることも異なる点です。
藻塩の作り方
藻塩作りは古代から続いてきました。昔ながらのやり方としては「焼いて作る」もしくは「かけ流しで作る」の2つの方法があります。
なお、現代では古代のやり方をもとにして独自の方法で塩作りをしているところもあります。
作り方①:海藻を焼いて作る
海藻をすのこの上に積み、海水を注ぎます。海藻に塩分を多くしみこませてから、海藻を焼いて灰にします。その灰を水に溶かして、濃度の濃い塩水である上澄み部分を釜で煮詰めて結晶化させます。
作り方②:海水をかけ流して作る
海藻を収穫して乾かし、塩が吹いた状態にします。それをすのこの上に積み上げ、煮詰めている途中の温かい海水をかけ流します。できた濃い塩水を釜で炊き、結晶化させます。
藻塩を活かした料理アイディア
天然塩は、口に直接入れる料理に添えたり振りかけたりして食べる方法がおすすめです。たとえば、ステーキやサラダ、天ぷらなどによく合います。
そして、中でも一度は試していただきたいものは以下4つの料理です。
- おにぎり
- 塩唐揚げ
- アイスクリーム
- 浅漬け
おにぎり
米が主食の日本において、好きではない人はいないなどと言われる国民食が「おにぎり」です。
藻塩を使ったおにぎりでは、海藻のうま味をしっかりと味わえるため、海苔を巻く必要がありません。ふんわりと藻塩で握って食べてみてください。
塩唐揚げ
藻塩は鶏の唐揚げにもよく合いますので、塩唐揚げを作ってみましょう。鶏肉を一口サイズに切り、酒とおろししょうがに藻塩を加え、よく肉に揉み込んで揚げます。
注意点として、唐揚げの下味によく使われるニンニクは使用しないようにしてください。藻塩を使う場合には風味が飛ぶと言われているため、ニンニクは避けることがおすすめです。
アイスクリーム
甘いものと塩辛いものの相性はよく、塩アイスも人気が高いスイーツです。
バニラアイスをお皿に盛り付けたら、そこに藻塩をパラパラと振りかけてみましょう。バニラアイスの甘さがより際立ち、とても風味豊かになります。
浅漬け
独特の風味を持つ藻塩は、浅漬けにもぴったりです。好きな野菜をビニール袋に入れたら、藻塩もそこに入れて、手でもんでください。
ほんのりと甘いうま味がたっぷりの浅漬けができ、白米のおかずにもやお酒のおつまみ、そしてお茶うけにもちょうどよい辛さと歯ごたえです。
いつものお料理に藻塩をプラスしよう
藻塩は海藻のうま味が凝縮された、うま味たっぷりの貴重な塩です。振りかけるだけで普段の食事がより美味しくなるため、ぜひ一度手に取ってみてください。
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